​ドミニクシェフより​

レストランの厨房に音楽は必要ない。調理人の所作、足音、食材と厨房機器の発する音が、

シェフがコンダクターを務めるオーケストラの奏でる協奏曲となり、

そのすべてが、お客様の元に届けられるお皿の上に集約されるからだ。

自宅にいて、楽しみで調理をする時は少々趣が異なる。

何を食べたいか、どんな料理を作るか、誰に味わってもらいたいか、窓の外はどんな天気か。

何より、その時の自分の気分によって、掛けたい音楽がある。

いや、音楽ではなく、ラジオから流れる最新のニュースに耳を傾けながら、

淡々と野菜の皮を剥いていたい時もある。

頭を空っぽにしたい時には、フライパンの上で豪快に弾ける油の音と見事に融合するハードロック系。

しとしと雨のメランコリーな日には、弱火でことこと煮物をしながら、湿り気のあるセクシーなジャズ。

フュージョン料理を思いついて、味噌や山葵で変化球をつけたい時には、日本語の美しい歌声。

自宅の孤独な作業の時間には、どんなメロディもリズムも、

スーシェフのような、良き助っ人、相棒となってくれる。